船窪岳・七倉岳
2013/10/12~2013/10/14
船窪岳・七倉岳
 
2013/10/12(土):曇りのち雨:七倉~湯俣温泉~七倉(車中泊)
2013/10/13(日):晴れ:七倉~七倉岳~船窪小屋テン場(テン泊)
2013/10/14(月):晴れ:七倉岳~船窪岳~七倉
● 2013/10/12 ●

三連休ということもあり、敢えて静かな山域へ。連休初日でしたが朝6時でも七倉登山口の駐車場にはまだまだ余裕がありました。
空は快晴、一見登山日和に感じます。出発の準備をしている人もそれなりにいるので刺激を受け、激しく稜線に上がりたい気持ちになってしまいますが西高東低の冬型の気圧配置、予報では午後から下り坂。稜線では吹雪くとのこと。 朝のこのお天気は、疑似好天らしいです。早い人はお昼には稜線に着くので大丈夫だと思いますが..。

事前に予報を見て決めたのが、初日は湯俣温泉までのトレッキング。
湯俣温泉は天然記念物の噴湯丘がある他、北鎌尾根や伊藤新道の起点となっている所なのでぜひ一度訪れてみたいと思っていました。 ただ高瀬ダムまで車で入ることができず、その上片道3時間もかかることを考えるとなかなか気軽に行くことはできません。今回はいい機会なのでのんびりと一日掛けて行ってみることにしました。
高瀬トンネルを抜けると船窪岳や針ノ木岳を望むことができ、湯俣が近付いて来ると今度は槍ヶ岳を望むことができました。 時折澄み切った高瀬川の流れを眺めながらほぼ平坦道のトレッキングコース。色付きかけた樹々が綺麗です。 湯俣温泉晴嵐荘からもうしばらく上流へ行くと、不思議なかたちの噴湯丘に出会いました。近付くことはできず残念でしたが離れていても地球の鼓動を感じます。
休憩していると日が陰り肌寒くなってきました。稜線を見上げると怪しい雲が流れ風が強まっているようです。やはり天候が崩れました。帰路は樹々のおかげで雨具を着ようか迷うほどの雨で済みましたが、気温が急降下。 それなりの距離があるためなのか、登山靴で平坦道を歩き続けたためなのか、七倉まで戻って来ると結構疲れました。有難く温泉に入り翌日の好天を期待します。

● 2013/10/13 ●

雨は夜まで降り続きましたが、朝起きると雲ひとつない晴天。コースタイムが長く激しい急登なので、まだ薄暗い時間帯に出発します。
七倉尾根を登っていると、広範囲で針葉樹が広がっていることに気付きました。そのためお天気が良くても薄暗く、足もとにもお花など植物があまり生息できない原因となってしまいます。 そして展望もきかず連続する激しい急登と、複雑に樹の根が絡む歩き辛い道。そんな道を5時間ほど登り続け、レンズ1本車に置いて来れば良かったかな..と思った頃、樹間から槍穂高を望むことができて感激しました。 このルートで最も急な鼻付八丁付近で出会った方々に伺うと、昨日は稜線は吹雪、そして今朝もまだ5cmほどの雪が残っていたとのこと。雪景色を眺めたくなり気が焦ります。
七倉を出発してから7時間、天狗の庭に着くと、槍穂高と昨日歩いた高瀬ダムの大展望でした。天狗の庭からもうひと登りを終えるとまた素晴らしい風景が待っていました。聳え立つ針ノ木岳と蓮華岳。その間に目指す七倉岳。 さらに進むと立山や剱まであらわれました。そして崩壊進む船窪岳。ただ悲しいことに山々にも足もとにもほとんど雪は残っていません。

既に営業が終了した船窪小屋で受付を済ませ、七倉岳に寄ったあとテン場へ向かいます。
やっとテントを張り終えた後、本日最後の難関、北アルプス一恐怖と言われる水場へ行かなければなりません。行って来られた人たちのお話を伺うと、雪が降ったので地盤が緩み頻繁に落石が起こっているとのこと。 果たして自分に行けるのか・・でも当然のことながら水がないと食事を摂ることも飲み水を作ることもできません。覚悟を決めると同じテン泊組の人たちが行かれたので一緒に行くことができ助かりました。 水場は崩壊地の中から地下水を引いてありました。設置されているロープを使用し崩壊地を降りるのですが、ロープのおかげで慎重に行けば何とか大丈夫でした。 それにしてもこの水場まで小屋のご主人の老夫婦が毎日小屋から1時間かけて往復されているとは驚きです。それよりも最初にこの場を探り当てられたことの方が驚くべきところでしょうか?
水を汲むと既に夕陽の時間。テントに戻り三脚を持ちまた七倉岳に登ります。何とか夕陽に間に合いましたが日が落ちると一気に気温が下がり、そしてほとんど休むことのない13時間の行動に疲れ果て、 食事をするのも精一杯でシュラフに潜り込みました。

● 2013/10/14 ●

夜中2時、テントすぐ横の崖地からおびただしい数の落石がありました。疲れていたこともありそのまままた寝てしまいましたが、朝になって確認すると、もう一段下のテン場だったら落石に遭っていたかもしれない..と思うと、 今更ながらに恐怖を感じました。
七倉岳山頂でご来光を待っていると、ようやくあらわれた太陽は真っ赤な色をしていました。そしてあらわれた靄がその赤い光を受けてより深く色が際立ち、印象深いご来光になりました。
船窪岳方面へ向かいたいので急いでテン場に戻ります。船窪乗越付近の既に葉を落としたダケカンバ帯がとても素晴らしく、その中でわずかに残雪が残った登山道、 そしてナナカマドや足もとのマイヅル草は赤い実だけを残した晩秋の美しい風景が心に残り印象的でした。時間との戦いで、何とか船窪岳第一ピークまで行くことができました。乗越付近や第一ピークまでも崩壊地のすぐ上を歩き 高度感を感じる箇所もありましたが、崩壊が進んでいるため危険になり今年は別ルートを整備されたとのことで安心して歩くことができました。 ただ第一ピークを過ぎるといよいよ登山道はさらにアップダウンが激しく、そして険しくなっていくようです。
あまりのお天気の良さと風景の美しさに後ろ髪を引かれる思いでしたが、急いでテントを撤収、秋の夕日はつるべ落とし、下山はほとんど写真を撮ることもなく急いで下りました。

ところで今回の旅では船窪岳周辺の崩壊地を是非間近で眺めてみたいと思っていましたが、帰宅後、この崩壊の原因を調べてみました。
飛騨山脈(北アルプス)北部の白馬岳から烏帽子岳までの山脈を後立山連峰と呼ばれていますが(烏帽子岳までではなく針ノ木岳までとされることもある)、 連峰の東面はフォッサマグナ(中央構造線)に沿って隆起した断層地形をなし、 それと冬季の大量積雪がもたらす浸食との複合作用によって急崖をつくっています。八峰キレットや白馬の不帰の瞼などの岩稜、岩壁などのバリエーション・ルートが東面に集中していることや、 白馬岳周辺の非対称山稜をかたちづくっているのはこのためとのこと(YAMAKEI ONLINEより)。 それに加えて昭和54年に高瀬ダムが完成し大量の水を貯水したことにより地下水圧が上がり、 ダム周辺の山全体がさらに崩れやすくなったとのこと(三俣山荘「伊藤新道について」より)。
もともと崩壊地は自然現象だと思っていましたが、高瀬ダムがつくられたことが原因のひとつにあると思うと複雑な心境になります。
ただその崩壊地の中で懸命に生きているカラマツやダケカンバの樹々がとても印象的でした。 カラマツは脆くなった地形を安定させるために成長するらしいと知ると、より大自然の力強さを感じることができとても良い経験になりました。

● 写真(45) ●
  • 高瀬ダムからは船窪岳と針ノ木岳を望むことができました。
  • 高瀬ダムからは船窪岳と針ノ木岳を望むことができました。
  • とても大きな株立ちの樹、近寄ってみるとカツラの樹でした。
  • とても大きな株立ちの樹、近寄ってみるとカツラの樹でした。
  • ルート上にいくつかトンネルがありますが、ヘッドランプは必要ありません。
  • ルート上にいくつかトンネルがありますが、ヘッドランプは必要ありません。
  • 不思議な色付き方をしているモミジに出会いました。
  • 不思議な色付き方をしているモミジに出会いました。
  • 槍ヶ岳を望むことができるポイントに出ました!でも山頂のように見えるのは北鎌尾根独標で肝心の山頂は雲の中。
  • 槍ヶ岳を望むことができるポイントに出ました!でも山頂のように見えるのは北鎌尾根独標で肝心の山頂は雲の中。
  • 晴嵐荘に到着です。沢装備の準備?北鎌尾根へ行かれるのでしょうか?どうかお気を付けて..
  • 晴嵐荘に到着です。沢装備の準備?北鎌尾根へ行かれるのでしょうか?どうかお気を付けて..
  • 源流が槍ヶ岳の水俣川と、源流が三俣蓮華岳・鷲羽岳の湯俣川の合流点です。噴湯丘が見えてきました。
  • 源流が槍ヶ岳の水俣川と、源流が三俣蓮華岳・鷲羽岳の湯俣川の合流点です。噴湯丘が見えてきました。
  • 明らかに水の色が異なる場所がありました。そして硫黄臭とボコボコと湧き出る源泉。
  • 明らかに水の色が異なる場所がありました。そして硫黄臭とボコボコと湧き出る源泉。
  • 天然記念物の噴湯丘。不思議なかたち。地球の鼓動を感じます。
  • 天然記念物の噴湯丘。不思議なかたち。地球の鼓動を感じます。
  • 伊藤新道の名残りを見てみたいと思い、もうしばらく先へ進んでみました。燕岳付近の稜線が見えます。
  • 伊藤新道の名残りを見てみたいと思い、もうしばらく先へ進んでみました。燕岳付近の稜線が見えます。
  • 極端に熱い!か冷たい!かのどちらかでなかなか適温の場所が見つからず、とうとう雨が降り出してきました。
  • 極端に熱い!か冷たい!かのどちらかでなかなか適温の場所が見つからず、とうとう雨が降り出してきました。
  • 雨の帰路の中、真っ赤な実が目に飛び込んできました。ニシキギの実です。
  • 雨の帰路の中、真っ赤な実が目に飛び込んできました。ニシキギの実です。
  • 七倉岳に向かって登り始めると、足もとにはまだ色鮮やかな落ち葉が広がり疲労が少し残っている足には優しい。
  • 七倉岳に向かって登り始めると、足もとにはまだ色鮮やかな落ち葉が広がり疲労が少し残っている足には優しい。
  • 朝木の根とコケ類が絡んだところに光が射し込む、針葉樹林帯ならではの綺麗な光景を見つけました。
  • 木の根とコケ類が絡んだところに光が射し込む、針葉樹林帯ならではの綺麗な光景を見つけました。
  • 色鮮やかに染まった樹、そして遠くに槍穂高を望むことができました!
  • 色鮮やかに染まった樹、そして遠くに槍穂高を望むことができました!
  • 鼻付八丁の急登の綺麗に整備されたハシゴ。
  • 鼻付八丁の急登の綺麗に整備されたハシゴ。
  • 登り始めて7時間。ようやく天狗の庭に到着です。槍穂高連峰と高瀬ダム。
  • 登り始めて7時間。ようやく天狗の庭に到着です。槍穂高連峰と高瀬ダム。
  • 天狗の庭からあともうひと登りで素晴らしい展望が待っていました。針ノ木岳と蓮華岳。
  • 天狗の庭からあともうひと登りで素晴らしい展望が待っていました。針ノ木岳と蓮華岳。
  • 小屋が近付くと立山と剱もあらわれました。立山にはまだ薄っすらと雪が残っています。
  • 小屋が近付くと立山と剱もあらわれました。立山にはまだ薄っすらと雪が残っています。
  • 船窪小屋でテントの受付をお願いします。もう小屋締め作業が終了したところでした。
  • 船窪小屋でテントの受付をお願いします。もう小屋締め作業が終了したところでした。
  • 七倉岳山頂からは針ノ木岳と蓮華岳が素晴らしい眺めでした。ここでは剱岳は脇役です。
  • 七倉岳山頂からは針ノ木岳と蓮華岳が素晴らしい眺めでした。ここでは剱岳は脇役です。
  • 立山と竜王岳と五色ヶ原、そして船窪岳の崩壊地が間近になってきました。
  • 立山と竜王岳と五色ヶ原、そして船窪岳の崩壊地が間近になってきました。
  • 最後の長いハシゴを降りて、船窪小屋から20分、ようやくテン場に到着です。
  • 最後の長いハシゴを降りて、船窪小屋から20分、ようやくテン場に到着です。
  • テン場からも槍ヶ岳を綺麗に望むことができました。
  • テン場からも槍ヶ岳を綺麗に望むことができました。
  • 恐怖の水場へ。サブザックを持って両手を開けて気合いを入れて行きます。
  • 恐怖の水場へ。サブザックを持って両手を開けて気合いを入れて行きます。
  • ここから崩壊地へ向かってロープが設置されています。テン泊組のおじさまたちに先に行ってもらいます。
  • ここから崩壊地へ向かってロープが設置されています。テン泊組のおじさまたちに先に行ってもらいます。
  • ロープのおかげで何とか滑落せずに済みました。助かります。振り返って見上げたところ。
  • ロープのおかげで何とか滑落せずに済みました。助かります。振り返って見上げたところ。
  • 無事に水を汲み終えて、落石の攻撃を受けながら崩壊地を見上げます。
  • 無事に水を汲み終えて、落石の攻撃を受けながら崩壊地を見上げます。
  • 急いで七倉岳山頂へ。何とか夕陽に間に合いました。薬師岳のカール地形が綺麗です。
  • 急いで七倉岳山頂へ。何とか夕陽に間に合いました。薬師岳のカール地形が綺麗です。
  • 夜中の3時過ぎ。お隣のテントと富山の夜景の明かりで20分ほどバルブ撮影したところでISOを1600のままに気付き、失敗。
  • 夜中の3時過ぎ。お隣のテントと富山の夜景の明かりで20分ほどバルブ撮影したところでISOを1600のままに気付き、失敗。
  • 気を取り直して七倉岳山頂から。でもすぐに明るくなってきました。
  • 気を取り直して七倉岳山頂から。でもすぐに明るくなってきました。
  • 大町と安曇野、長野市の夜景まで見えました。夜明けです。
  • 大町と安曇野、長野市の夜景まで見えました。夜明けです。
  • 浅間山から赤い太陽が昇ってきました。靄がその赤い光を受けてより深く色が際立ちました。
  • 浅間山から赤い太陽が昇ってきました。靄がその赤い光を受けてより深く色が際立ちました。
  • 少し露出を上げて撮っても綺麗でした。
  • 少し露出を上げて撮っても綺麗でした。
  • テン場を後にして船窪岳方面へ向かいます。
  • テン場を後にして船窪岳方面へ向かいます。
  • 冬支度がととのったダケカンバたちの中で、華やかに赤い実だけを残すナナカマド。
  • 冬支度がととのったダケカンバたちの中で、華やかに赤い実だけを残すナナカマド。
  • 朝の光を受けた針ノ木岳が樹間から美しい姿で眺められる場所に出会いました。
  • 朝の光を受けた針ノ木岳が樹間から美しい姿で眺められる場所に出会いました。
  • 不動岳が朝を迎えました。遠くに槍ヶ岳や高瀬ダムも。
  • 不動岳が朝を迎えました。遠くに槍ヶ岳や高瀬ダムも。
  • とうとう崩壊地のすぐ上まで来てしまいました。
  • とうとう崩壊地のすぐ上まで来てしまいました。
  • 船窪岳第一ピークを過ぎると、ルートが大変なことに。
  • 船窪岳第一ピークを過ぎると、ルートが大変なことに。
  • 途中まで行ってみましたが、高いところが苦手なので恐怖を感じます。
  • 途中まで行ってみましたが、高いところが苦手なので恐怖を感じます。
  • 時間もないのでUターンします。崩壊地にも朝の光が回ってきました。。
  • 時間もないのでUターンします。崩壊地にも朝の光が回ってきました。
  • マイヅル草の赤い実も輝いていました。
  • マイヅル草の赤い実も輝いていました。
  • 帰りは旧道を歩いてみました。崩壊が進み、確かにとても危険です。
  • 帰りは旧道を歩いてみました。崩壊が進み、確かにとても危険です。
  • 最後に人気のない船窪小屋にお別れして下山です。槍が霞んでいました。
  • 最後に人気のない船窪小屋にお別れして下山です。槍が霞んでいました。