西穂独標
2011/12/30~2011/12/31
西穂独標
 
2011/12/30(金):曇り時々雪のち晴れ:新穂高~丸山~西穂山荘(テン泊)
2011/12/31(土):晴れのち曇り:西穂山荘~丸山~西穂山荘~独標~新穂高
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年末のお天気が良さそうなこともあり、初の厳冬期テン泊に挑戦してきました。 稜線の-20℃を超える世界は大変厳しく、その厳しさと相反するように目前に広がるあまりの美しい光景に、あらためてお山の美しさと厳しさを身を持って体感することになりました。

● 2011/12/30 ●

ロープウェイの始発(AM9:00)に間に合うように新穂高温泉へ向かいます。 この時期は、バスターミナルの隣に登山者用の無料駐車場が設置されているのでとても助かります。もうすでにお山に入っている人たちの車のほか、今日出発する人たちが準備をしていました。 止められる台数が少なく時間も遅かったのでもう泊める場所がないかも?と焦りましたが運良く1台分だけスペースを見つけることができました。
年末なので、観光ツアーの人たちであふれています。 できるだけ大きな荷物が邪魔にならないよう、ようやく西穂高口に着いた時はホッと一息。 展望台ではもう9時半なのに「ただいまの気温は-15℃」と表示されていました。 今朝の最低気温はいったい何度だったのでしょう?? これまでのぬるま湯のような世界とは一変、厳しい冬山の中へ入っていく覚悟を決めながらアイゼンを装着。

この時期はしっかりとしたトレースが付いているので、決して迷うことはありません。 ロープウェーに乗る前は上空の雲が流れ青空が顔を出していましたが、いざ歩き出してみるとまた雲が広がってきて太陽がなかなか顔を出しません..。 そのためなかなか気温が上がらず歩き始めて間もなく足と手の指先が冷えきって、かなりの痛さです。
お天気が悪いこともあり写真を1枚も撮らないまま、2時間半ほどで西穂山荘に着きました。 まずはテントを設置します。さすが年末。連泊されている方もいるようで、もうすでに数多くのテントが張られていました。

テントを張り終えた後、少しずつ空が明るくなって来たので、山荘でのんびりお昼ご飯を食べたい気持ちを我慢してワカン歩きに挑戦。 上高地側にトレースが付いていたので少し歩いてみることにしました。 樹々の霧氷も最高に綺麗です。-10℃以下まで気温が下がらなければ見ることのできない霧氷。 雲が流れ、光が変わるごとに変化する様々な色や表情がとても美しくて夢中になってしまいます。 光が当たり輝く霧氷も綺麗ですが、暗い背景の中でしっとりと浮かび上がる霧氷も綺麗。 のんびり写真を撮っていると、まだ粉雪が舞う中でも雲が流れ青空が広がり、樹々が一斉に輝き出しました。 まるで厳しい冬のひとときの晴れ間を楽しんでいるように感じました。

時間は午後2時過ぎ。 ようやくお天気が回復に向かってきたので、これからテントに戻って丸山で夕陽を撮影する準備をすることにします。 ところがテントに戻るとまた雲が広がり雪が舞って来ました..。 今日は朝からずっとこんな感じですが、徐々に青空の広がる時間が増えて来ているので夕陽の時間には晴れることを祈りましたが、結局ほとんど太陽が顔を出さないまま、夕方へ。 周囲が真っ白のガスに包まれた風景に絶望的な気分になりながらも雲が流れているのでもしかしたら晴れる可能性もあると思い、小屋前でアイゼンを装着して出発の準備、そして待機します。 日の入り30分前には丸山あたりで過ごしていたい..。なかなか雲が晴れませんが時間が来たので思い切って稜線へ。

丸山に向かって登っていると、突然目前を覆っていた雲が流れ、一瞬穂高の峰々があらわれました! あまりに一瞬のことでしたので写真に撮ることはできませんでしたが、もしかするかも?!という気持ち。 興奮状態で駆け上がっていると見る見る間にガスが流れ、沈みかけた太陽がついに雲の中から姿をあらわし始めました! そして一瞬あらわれた後、また隠れてしまった穂高方面もふたたび雲が流れます!夕方の光を受けて赤く染まる岩壁。ほとんど諦めかけていたところだったこともあり、あまりの美しさに言葉が出ません。 そして霞沢岳の雄姿..。雪が冠った姿は険しく、そして美しいこと。

あれほど視界がなく真っ白で何も見えなかった世界が、あっという間に360度の大展望になりました。ただあまりの寒さ。気温を見ると-20℃。ここまで寒い世界で写真を撮るのは初体験です。 オーバーグローブをしているとカメラの細かな操作はできず、薄手の手袋だとほんの2、3分で指の感覚がなくなり危険を感じる寒さ。カメラも果たして-20℃の環境で動作するでしょうか?
そんな中、あっという間に落日の時間。燃えるように激しくガスが色付き始めました。 太陽がどんどん沈んで行く焦りの中、オーバー手袋は慣れていないので細かな作業ができないもどかしさ。シャッターを1枚切るのに相当な時間が必要でした。
風が強いので体感温度は更に低いのでしょう。普段は撮影していると寒さを忘れているのですが、この時ばかりは寒さと痛さとの戦いでした。 足もとの雪面には風によって描かれた模様がどれほど厳しい寒さなのかを物語っていました。

陽が落ちて行くごとに真っ赤に染まる世界。それまで深く周囲を覆っていたガスが一気に流れ、モノトーンだけの厳冬の世界からほんのひとときだけ、辺り一帯があたたかな色に包まれました。 太陽と雲の流れ、そして雲海や雪面に映える真っ赤な色..。これ以上ないあまりの美しい光景に魅せられたほんの数分間、あまりにも短いひとときでしたがあまりの大きな感動に心が溢れそうになりました。 そして最後の光を放ちながら、静かに太陽が沈んでいきました。最後の最後に姿をあらわした太陽に、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。 日没後の山々のやさしい表情をひと通り撮影してホッとした頃、寒さがかなり限界なことに気付き、そしてそろそろ明かりが必要なほど暗くなってきたのでテントへ戻ります。 戻る途中に一羽の雷鳥と出会いました。

● 2011/12/31 ●

夜は万全の寒さ対策をしてきたつもりですが、寒くてほとんど眠ることができず..朝になってしまいました。御来光の時間に合わせて昨日と同じポイントまで登ります。 凍て付く寒さの中を歩いていると少しずつ空が明るくなり、雪山の美しい色が目前に広がってきました。 乗鞍岳の山頂一帯が赤く染まってきました。そして噴煙上がる焼岳の頂きも。今年一年を締め括る最後の光が昇ってきました。 夕方よりも早朝のほうが冷え込みが厳しいかと思っていましたが、ほとんど無風だったため体感温度は昨日の夕方のほうがはるかに低く感じるくらいでしたので助かりました。

年末年始なのでテントは午前10時に撤収するように、とのことでしたので一旦テントに戻り、荷物を積めた後に独標へ向かうことにします。 テントを撤収し、小屋のストーブを少しだけお借りしてあたたまり、再び丸山まで登って来ると11時になっていました。 濃く深く、雲ひとつない真っ青な青空。気温も上がってきて太陽の力を感じます。気持ちの良い雪上お散歩の始まりです。 はるか遠くに富士山まで望むことができましたが、乗鞍岳のほうを振り返ると、早くも変化が訪れようとしていました。 厚くて白い雲が流れ込み、あっという間に稜線を包み隠していきました。早朝からあまりにも雲がなく変化がない風景が続いていたので、今度は雲の流れが新鮮に感じます。

今日の独標の雪の付き具合はどうでしょうか..?身が引き締まる緊張感、そしてあまり雪が付いていないことと、鎖が出ていることを祈ります。 独標に近付くごとに穂高らしいスリルある岩稜帯になり、岩と雪のミックスに気をつけながら一歩一歩ゆっくりと慎重に歩きます。とりあえず行けるところまで行きます。 お天気がいいことと年末年始ということもあり、それなりに頻繁に独標を目指す人たちが行き交います。 自分と同じくらい、いいえもしかすると自分以上に慎重になっている人を見ると、自分だけじゃないという安心感を感じ緊張が和らぎました。やはり今年は雪が少ないようです。 感覚的に去年の11月に登った時と、雪の量はさほど変わらないようでホッとしました。鎖場もハシゴも出て登りやすく、降り積もった雪と岩場にアイゼンが引っ掛からないように注意すれば大丈夫でした。

丸山からちょうど1時間後のお昼の12時に、2,701mの西穂独標到着。 今年一年最後の日に最高のお天気の中、ここまで登ることができたことに感謝です。 ただ稜線を包み隠して来たガスがさらに範囲を広げて来ました。焼岳もすっかり隠れつつあるのを見て、早々に下山します。 登りよりも下りのほうが危険なので、より慎重に一歩一歩下ります。 独標と、そのもうしばらく先の岩場を越えればもう安心。ホッと一息ついた頃に、ガスの中に突入しました。辺り一帯が真っ白になってしまいました。 この中をこれから登って行く人を見ると、申し訳なく思う気持ちで複雑です..。どうか無事に下山されますように。

山荘まで戻ってくると、お正月に向けて今日もたくさんのテン泊組で賑わっていました。 そしてお正月に向けて次から次へと登って来る人たち。小屋の方々も大忙しでした。 この次は更に厳冬期のテン泊に挑戦したいと思います。ただ独標登頂は難しいと思うので、この周辺でゆっくり冬山の表情を撮ってみたいと思います。

● 写真(27) ●
  • この時期は、バスターミナルの隣に登山者用の無料駐車場が設置されているのでとても助かります。駐車場は満車状態。
  • この時期は、バスターミナルの隣に登山者用の無料駐車場が設置されているのでとても助かります。駐車場は満車状態。
  • 2時間半ほどで西穂山荘に到着。さすが年末。もうすでに数多くのテントが張られていました。
  • 2時間半ほどで西穂山荘に到着。さすが年末。もうすでに数多くのテントが張られていました。
  • 光が当たり輝く霧氷も綺麗ですが、暗い背景の中でしっとりと浮かび上がる霧氷も綺麗。
  • 光が当たり輝く霧氷も綺麗ですが、暗い背景の中でしっとりと浮かび上がる霧氷も綺麗。
  • のんびり写真を撮っていると、まだ粉雪が舞う中でも雲が流れ青空が広がり、樹々が一斉に輝き出しました。
  • のんびり写真を撮っていると、まだ粉雪が舞う中でも雲が流れ青空が広がり、樹々が一斉に輝き出しました。
  • 辺り一面、真っ白のガスに包まれていましたが、沈みかけた太陽がついに雲の中から姿をあらわし始めました!
  • 辺り一面、真っ白のガスに包まれていましたが、沈みかけた太陽がついに雲の中から姿をあらわし始めました!
  • 一瞬あらわれた後、また隠れてしまった穂高方面もふたたび雲が流れます。
  • 一瞬あらわれた後、また隠れてしまった穂高方面もふたたび雲が流れます。
  • 笠ヶ岳から抜戸岳へと続く稜線も、すっかりあらわれました。あっという間に360度の大展望になりました。
  • 笠ヶ岳から抜戸岳へと続く稜線も、すっかりあらわれました。あっという間に360度の大展望になりました。
  • 太陽に目を向けると、あっという間に落日の時間。
  • 太陽に目を向けると、あっという間に落日の時間。
  • そして燃えるように激しく色付いたガスの流れ。
  • そして燃えるように激しく色付いたガスの流れ。
  • 陽が落ちて行くごとに、モノトーンだけの厳冬の世界から一変。辺りが真っ赤に染まりました。
  • 陽が落ちて行くごとに、モノトーンだけの厳冬の世界から一変。辺りが真っ赤に染まりました。
  • そして最後の光を放ちながら、静かに太陽が沈んでいきました。
  • そして最後の光を放ちながら、静かに太陽が沈んでいきました。
  • ふと霞沢岳に目を向けると、険しくも美しい表情でした。
  • ふと霞沢岳に目を向けると、険しくも美しい表情でした。
  • そして振り返れば、雲海から聳え立つ笠ヶ岳から抜戸岳の稜線。
  • そして振り返れば、雲海から聳え立つ笠ヶ岳から抜戸岳の稜線。
  • 凍て付く寒さの中を歩いていると少しずつ空が明るくなり、穂高の峰々が目前に広がってきました。
  • 凍て付く寒さの中を歩いていると少しずつ空が明るくなり、穂高の峰々が目前に広がってきました。
  • 夕方よりも早朝のほうが冷え込みが厳しいかと思っていましたが、ほとんど無風のため助かります。
  • 夕方よりも早朝のほうが冷え込みが厳しいかと思っていましたが、ほとんど無風のため助かります。
  • そして険しい穂高と対照的に、雪面を駆け回る楽しそうなウサギの足跡。
  • そして険しい穂高と対照的に、雪面を駆け回る楽しそうなウサギの足跡。
  • 乗鞍岳の山頂一帯が赤く染まってきました。そして噴煙上がる焼岳の頂きも。今年一年を締め括る最後の光。
  • 乗鞍岳の山頂一帯が赤く染まってきました。そして噴煙上がる焼岳の頂きも。今年一年を締め括る最後の光。
  • 朝から雲ひとつない真っ青な青空でしたが、振り返ると、厚くて白い雲が流れ込み始めました。
  • 朝から雲ひとつない真っ青な青空でしたが、振り返ると、厚くて白い雲が流れ込み始めました。
  • 今日の独標の雪の付き具合はどうでしょうか..?身が引き締まる緊張感。
  • 今日の独標の雪の付き具合はどうでしょうか..?身が引き締まる緊張感。
  • 霞沢岳。そして六百山のはるか遠くに富士山も望めます。眼下に上高地を流れる梓川。
  • 霞沢岳。そして六百山のはるか遠くに富士山も望めます。眼下に上高地を流れる梓川。
  • 独標に近付くごとに穂高らしいスリルある岩稜帯になり、岩と雪のミックスに気をつけながら一歩一歩ゆっくりと慎重に登ります。
  • 独標に近付くごとに穂高らしいスリルある岩稜帯になり、岩と雪のミックスに気をつけながら一歩一歩ゆっくりと慎重に登ります。
  • 西穂独標到着です。今年は雪が少なく鎖場もハシゴも出て登りやすく、注意すれば大丈夫でした。
  • 西穂独標到着です。今年は雪が少なく鎖場もハシゴも出て登りやすく、注意すれば大丈夫でした。
  • ピラミッドピークから何人もの方たちがこちらに向かって下りて来るのが見えます。見ているだけで怖い..。
  • ピラミッドピークから何人もの方たちがこちらに向かって下りて来るのが見えます。見ているだけで怖い..。
  • 奥穂から前穂、岳沢。
  • 奥穂から前穂、岳沢。
  • つい先程まで過ごしていた場所を見下ろします。ちょうど独標下に歩いている人。この高度感に緊張します。
  • つい先程まで過ごしていた場所を見下ろします。ちょうど独標下に歩いている人。この高度感に緊張します。
  • 下山は岩場を終えてホッと一息ついた頃に、ガスの中に突入。辺り一帯が真っ白になってしまいました。
  • 下山は岩場を終えてホッと一息ついた頃に、ガスの中に突入。辺り一帯が真っ白になってしまいました。
  • 冬山の怖さをあらためて体感しました。お正月に向けて今日もたくさんのテン泊組で賑わっていました。
  • 冬山の怖さをあらためて体感しました。お正月に向けて今日もたくさんのテン泊組で賑わっていました。