北穂高岳
2011/11/01~2011/11/05
北穂高岳
 
2011/11/01(火):晴れ:上高地~横尾~涸沢(テン泊)
2011/11/02(水):晴れ:涸沢~北穂高岳(小屋泊)
2011/11/03(木):曇り:北穂高岳(小屋泊)
2011/11/04(金):晴れ:北穂高岳(小屋泊)
2011/11/05(土):曇り夕方から雨:北穂高岳~涸沢~横尾~上高地
*

毎年この季節になると、穂高が冠雪するたびに気になる北穂高岳登頂。今年はなかなかまとまった雪が降らず、ようやく降り積もったのは小屋閉めの1週間前でした。 今年こそは、と思い岩と雪と氷のミックスの中、全神経集中してチャレンジしてきました。

初めて北穂に登ったのは、5年前。まだ紅葉最盛期の10月半ばでした。 その時は涸沢の紅葉を是非見てみたいと思っていましたが、もしかすると憧れの北穂に登ることができるかもしれないと思い、念のため軽アイゼンを持って涸沢に入りました。 わずかに雪が積もっていましたが降雪直後でやわらかな雪だったということと、その雪も南稜のテン場から上部しか残っていなかったため軽アイゼンを使わなくても運良く登頂できてしまいました。 その時の初めて登った山頂からの眺め、新雪を冠った前穂、奥穂、槍ヶ岳を始めとする北アルプスの山々がこの世のものとは思えないほど素晴らしく、生涯忘れることのできない思い出となりました。 その3年後にもう一度、10月半ば過ぎに涸沢に入ることができましたが、今度はもう時既に遅くて一番の難所が凍り付き、かなりの技術が必要となりそうで残念ながら涸沢で諦めることになりました。

そして今回、秋の穂高冠雪期の涸沢入りは三度目です。
当然ながらピッケルと12本爪アイゼン、もう11月なので防寒着もしっかりと準備し、天候や技術的に北穂で留まることになった時のために4日分の食料も準備し、 そのためまた荷物は26kgになりましたがそれだけの装備を持ってある程度の時間を歩くことのできる体力も今年は身に付けたように感じるので、自分の中では出来る限り万全の準備を整えて挑みました。

● 2011/11/01 ●

いつものように睡眠が2時間しか取れないまま、沢渡へ。 この時期の沢渡からの始発バスの時間は、朝6時過ぎ。まだ30分ほど時間があったので、タクシーに乗れないかな?と思い、他に上高地に向かう方がいないか探したところ、この時期でも運良くタクシーの相乗りができました。 河童橋に着くと、穂高の上部に少しだけ、でもしっかりと雪が冠っているように感じました。朝一番の光が当たってとても綺麗です。
河童橋を出発したのは朝の7時。 ところが明神に向かって歩きながら、早速荷物の重さが気になり出しました。考えてみると霞沢岳から帰ってきてからまだ10日しか経っていないこと、 そして3日前にロードバイクである程度足に負荷を掛けてしまったことも原因かもしれない..。早くも少し不安になってしまいました。 横尾に近付くにつれ、前穂の冠雪が気になります。上高地一帯はまだカラマツの紅葉が残っていて晩秋の雰囲気が漂っていました。

横尾からしばらく進むと横尾谷のはるか遠くに、これから目指す北穂が見えて来ます。 険しい岩壁に雪が積もっていて、まだ光の回らない屏風岩や横尾谷とのコントラストがとても美しいです。 気分が高揚するとともに、果たしてこの時期にあれほどのお山に登ることができるのか不安な気持ちも入り混じります。 涸沢に近付くにつれ、すっかり葉を落としたダケカンバの中で、まだ真っ赤な実を付けたナナカマドが目立つようになってきました。 登るごとに少しずつ穂高の山々が望めるようになり、その都度、稜線に向かって登ることを考えると、あまり雪が積もっていませんように..と祈る気持ちと、 でも逆に写真を撮ることを考えると、ある程度の雪が積もっていますように..と祈る気持ち。まったく相反する気持ちで、自分勝手に雪の量を祈るなんてと思いながらドキドキしなから涸沢へ。

あと2日で小屋閉めの涸沢ヒュッテは、もうすっかり雪対策の準備が整っていました。 テントの受付をした時に、一番気になること、「今日は北穂へ向かわれた方はいますか?」と伺ってみましたが、「いません」のひと言。 「それでは明日は登られる予定の方はいらっしゃいますか?」の質問にも「いません」のひと言。小心者の自分はこれで更に不安が倍増。
でもそんな簡単に諦められないので小屋泊の方々それぞれに伺ってみると、大部分の方は涸沢泊りでしたが、中には行けるところまでチャレンジする方、 それから涸沢小屋にお泊まりの方では登られるご予定の方もいるとの話を聞き、少しホッとしました。 どうやらこの時期の登頂は夏山とはまったく異なるので、小屋の方々は神経質になっているようです。気軽に登ろうと考えている人にはなるべく登らせないようにしているのかもしれません。 それからこの時期は「自己責任」ということで(この場合は意味が分かりませんが)、テント代は何泊でも無料とのことでした。

テントを張ってのんびり一段落。 テントの入り口を開けると稜線を眺められる位置に張りました。今日のテン泊は自分以外にあと二張りのみです。
夜、テントから顔を出すと、穂高の稜線のすぐ上に月が輝いていました。寒かったのでテントの中に三脚を立てて、自分はシュラフに潜り込みながら星空を撮ってみました。

● 2011/11/02 ●

朝はできるだけ体力の回復、そして体力を温存するために、穂高に光が当たる直前までシュラフの中でのんびり。
美しいモルゲンロートを見た後に、涸沢の池へ。 北穂へは、凍った雪が緩んで来る時間帯に登ろうと思っていたので、その前にしばらくお散歩です。 どのくらい凍っているかな?と期待して行きましたが、表面はすべて氷に覆われていました。でも池の中はまだ凍っていません。 氷は美しい自然の造形美。自然の中で過ごしていると、同じ場所や同じ時間帯でも決して同じ瞬間はありませんが、特にこのように水が凍り、そして解けて行く姿は写真を撮ることを考えるととても魅力的な被写体に感じます。 そして今は朝の光が少しずつ差し込んで来る時間帯。今だけしか見ることのできない貴重な被写体に夢中になってしまいました。

出発の準備が整ったのは9時過ぎ。 気温が上がって雪が緩んで来ているのを祈ります。 既に何人か北穂に向かって行かれるのを見たので少し安心、とりあえず行けるところまで頑張ります。 テントとシュラフとマット以外はほぼ全て持ったので、22kgほど?ストックは最後までかなり迷いましたが、やはり下山のことを考えると持って行くことに決めました。 行けるところまで、と思いながらもここで無事に登頂できればこの5年越しの夢が叶うという気持ちがやはり強く、そして申し分のないお天気です。 頑張れば行けるかな?ここまで来たなら是非登りたい、自分に負けたくないと思うとより緊張感が高まってきました。

登り始めは全く雪がないので最高に気持ちの良い秋空の中、最高の気分で登ります。 最初は穂高らしさを感じつつも緩やかな登り。ザックもそれなりの重さなので、ストックを持ってきて良かった。
陽気な外国人さん2人に出会いました。一緒にテン泊していた方々のようです。 荷物は2リットルのペットボトルのみだったのでビックリ!英語でその驚いた気持ちを話せないので手に持っていた姿を真似て見せると、楽しそうに色々と英語で話し掛けてくださいました。おかげで緊張感が和らぎ助かりました。

登り始めて1時間が経ち、前穂高岳が正面に堂々とした姿で聳え立っています。 そして眼下に見える涸沢が遠く小さくなってしまいました。 涸沢にもようやく光が当たり始めたようです。
突然、前方に急傾斜の大きな岩が立ちはだかりました。荷物が重いとより技術的に困難になってくるということをこの岩を越えるところから実感し始めました。 大きな岩を越えると単独の女性が後から追いついて来られました。今朝は横尾にテントを置いて登って来られたそうです。同じく単独女性、しかもテン泊とのことなので一緒に歩くことにしました。 普段はお仲間と一緒に歩いているそうですが、今回はたまたまお一人になったとのこと。そしてかなり本格的に冬山をされるそうで、厳冬期の笠ヶ岳へも行かれたとのこと。 山のレベルが全然違うと思いましたが、そんな彼女でも今回は一人だということと時期も時期なので少し心細いとのことでした。 ところがしばらく歩くと歩くスピードが全然異なることが分かりました(泣。遅いので、先に行ってもらうことに。

一番の難所のクサリ場に到着すると、この辺りから雪が残っていました。 かなり急な壁。でもしばらくはクサリ場なので安心。少し先に先程の彼女が登って行くので心強い気持ちで気合いを入れて登り始めます。
ただその長いクサリ場を過ぎたところが大変でした。 しばらく何もない岩場を登ったところで小さな三段ハシゴがあるのですが、崖側に設置されていてどうしてもそのハシゴに手が届きません。 無理してハシゴに手を伸ばそうとしたら、崖側に落ちてしまいそうなのです。 でもそのハシゴを利用できないとなると、なかなかいいホールドが見つかりません。 小さな手がかりはありますが、荷物が重いことでなかなかその小さなホールドで体を支え切れなくて、登れない。 ズルズルと落ちながら何度かチャレンジして三度目でやっとその岩を乗り越えられましたが、結局その三段ハシゴは使わずに登りました。下りはどうなるのかな..もし岩に氷がついているとなるとかなり大変そう。

そして雪が深くなって来たのでアイゼンを装着。 ところどころ日当たりの良いところはまだ岩が出ているところがありますが、雪と岩のミックスはとても苦手なので迷わずアイゼンに頼ります。 先程の難所から先はそれほど気を付けなければならないところはありませんが、急登で雪の残った岩場なので全神経を集中し、そして岩の他にもハイマツの枝でバランスを崩さないよう気を配りながら登ります。 難所を無事越えられた後は、下りるより登るほうが安全そうなので、もう後戻りする選択肢はすっかりなくなりました。 トレースもしっかりと付いているし先に登った方々が下りて来ないので安心してトレースを辿ることができました。

南稜のテン場に着いたのは、登り始めて4時間後の午後1時過ぎ。 ザックを下ろして休めるので、久しぶりにカメラを出しました。しばらく先に山頂が見えます!あともう少し、確か最後のトラバースだけ気を付ければもう大丈夫そうです。 前穂と奥穂が同じ目線になっていることに気付き、大感激!と思っているとみるみる間に奥穂にガスがかかり始めました。 お天気が崩れるのは夕方からだと思っていましたが、あっという間にガスに覆われ始めました。あれほどお天気が良かったのに..。まだ山頂までしばらくあるので、視界が悪くなるとまた少し心細くなってきました。 最後のトラバースも雪が凍っていませんでした。
そして午後1時半過ぎ、北穂高岳山頂に無事到着しました!!無事に登ることができて良かった..。正直かなりホッとしました。登り始めてから4時間半ほどでした。

北穂高小屋に泊まるのは3年ぶり。そして3度目ですが、小さな小屋ということもあってスタッフの方々の気遣いがいたるところに感じられてとても良い印象がありました。 受付時にお話を伺うと、今日は宿泊客は少ないので贅沢にも2人部屋に1人で過ごすことができそうとのことでした。受付を済ませて他の方々にご挨拶していると、ほとんどの方が常連さんだと分かりました。 難所手前で出会った単独女性も、常連さんたちのお知り合いとのこと。常連さんたちは、小屋明けと小屋閉めの時には毎年来られていて中には一週間ほども連泊される方もいるそうです。

あたたかい小屋の中でゆっくりくつろぎながら窓の外を眺めていましたが、外は相変わらず真っ白。なかなかガスが晴れませんでしたが、日の入り1時間前の午後4時。あれほど深く覆っていたガスに動きを感じました。 慌ててカメラを持って外に出ると、槍ヶ岳の穂先、そして振り返ると前穂がすっかり姿をあらわしていました! 足元には涸沢も見えます。北穂高小屋から一歩外に出ただけでこれほどの眺めを見ることができること。 あたたかな小屋の中で過ごしているとつい忘れそうになってしまいますが、あらためてこの小屋が建っている場所がなんて素晴らしい場所だと感じます。
小屋に戻り急いで準備をして、山頂へ向かいます。山頂へはほんの数段の階段を登るだけですが、アイゼンは必須です。 夕陽が沈む笠ヶ岳方面もガスが流れてきました。ただ空がほんのり淡く色付いただけで、夕陽を見ることはできませんでした。

素泊まりは自分だけのようで、凍える外で一人自炊..?と思いましたが、小屋の方が「火は外でお願いしますが食べる時は中でどうぞ」とのことでしたので(ありがとうございました)助かりました。

● 2011/11/03 ●

夜は相変わらず興奮状態であまり眠れないまま迎えた朝。翌日は、早朝から外はガスで真っ白でした。 それでももしかしたら?と思い、ご来光1時間前の朝5時に目覚ましを合わせ山頂まで出かけてみましたが、結局何も望めないまま..。 展望のないお天気が続くので状況の悪い中を不安に思いながら下山するよりも、せっかくここまで登って来たこともあり明日の天気予報を見た結果、思い切って連泊することに。 下山される方々をお見送りしましたが、天気が悪いのでなるべく単独は避けてグループになって下りて行かれました。どうか皆さん無事に下りられますように。

結局、夕方になってもそのままお天気は回復せずシャッターを一度も切らないまま夜になってしまいました。 明日のために体力を温存するため、早めに眠ろうと努力していたところ、すでに何人かの方が眠りについた夜の9時過ぎ、「綺麗な星空!」と声が聞こえました。 三脚とカメラを持って外に出たところ、周囲を覆っていたガスがすっきりと晴れ、そしてたくさんの綺麗な星が瞬いていました!宿泊客の皆さん大喜び。 しばらくしかシャッターを開けておくことができませんでしたが、槍ヶ岳上空の北極星とその周りを回る星たちの軌跡を少しだけ撮ることができました。

とうとう明日は下山の日。そう思うと登る時に不安に感じた例の三段ハシゴが頭の中をよぎり、また夜は興奮してなかなか眠れません。 宿泊されている皆さんのお話を伺うと、やはり思うところは同じらしく「下山はあの場所だけが要注意だね」と口を揃えて言っていました。 なぜあのハシゴはあの場所に付けることになったのか?もう少し利用しやすい場所にあれば何の問題もないので不思議でなりません..。 でも予報を見れば明日は一日お天気良さそうなので、ゆっくりと慎重に下山すれば大丈夫かな。 そう思いながらあまり深く考えないようにしているといつの間にか眠りに付いていました。

● 2011/11/04 ●

翌日は、快晴の雲ひとつない静かな朝を迎えました。 日の出5分前、静かに穂高が目覚めようとしていました。 目前の風景が現実のものとは思えず、あまりの美しさに言葉が見つかりませんでした。 常念岳の美しいシルエット。そして浅間山の噴煙。雲海の中に浮かぶ山々がとても綺麗です。寒々とした寒色系の色の中に暖色系の暖かな色が見る見る間に広がってきます。 そして富士山や南アルプスも綺麗。雲がかかっていないため、富士山の裾野が広く大きく感じます。 八ヶ岳から太陽が昇ります。まったく何も見えなかった昨日と比べると贅沢な話ですが、雲がないことで変化がなく少し残念な気持ち。 奥穂に続き前穂の山頂にも光が回り始め、赤く美しく染まりました。うっすらと雪を冠ったことで色が変化していく姿..。

綺麗な山々とご来光を無事見ることができ、これで心置きなく下山できます。 今朝は放射冷却のためか気温が下がっているので、午前中少しのんびりして9時か10時に小屋を出発することにします。 この時期にこの荷物では一日で上高地まで下りる自信がないので涸沢でもう一泊することを思うと、写真を撮りながらのんびり下りても程良い時間に涸沢に着けるはず。
そう思いながら朝ご飯を食べていたところ、常連の女性から「もう一泊しませんか?」とお誘いいただきました。 どうやら他の常連の方々は今日下山されるみたいで、明日ひとりで下山するのは心細いそうです。 自分もひとりで下山するのは心細いのは同じなので、ただ食料がほぼ尽きたのでかなり迷います。涸沢に下りればもう一食分テントの中に置いてあるので、今日下りれば大丈夫なのですが..。 それから足が遅いのでとても一緒に歩けるスピードではないのでご迷惑を掛けることになるとお話しても、それでもいいのでぜひ一緒にとのこと。 天気予報を見ても明日のお昼頃までは大丈夫そうなので、かなり迷いましたがせっかくなので贅沢にもさらにもう一泊することにしました。 小屋の方に伺っても、一人分の食事の準備は今からでも大丈夫、間に合うとのこと。まさか小屋閉めの最終日まで北穂で過ごすことになるとは思いませんでした。

そうと決まればもう心は再びのんびりモード一色。 日中もずっと快晴で、小屋から眺める窓の外の景色は素晴らしい大パノラマが広がっています。 美しい山々はあまりの美しさに非現実的。槍ヶ岳から蝶ヶ岳に続く稜線すべて望むことができ、可愛らしい赤い山小屋の屋根も目に付き、地図と照らし合わせながらのんびり眺めていると歩いた時の記憶がよみがえります。 小屋の方々は小屋閉めの作業でお忙しそうで、でもお天気が良くあたたかいので作業がはかどっているようです。 最終日はそれほど登って来る方はいないと思っていましたが、それなりに賑わいまた宿泊客は10人ほどになりました。
登って来られた方々と言葉を交わすと、やはりこの時期に3,000mまで来られる方は、皆さんそれぞれ普段からそれなりの負荷をかけたトレーニングをされていることが印象に残りました。 そのため年齢を重ねても体つきはもちろんのこと心までも若々しく、自分もそうありたいと感じます。

今度こそ最終日の今日こそは綺麗な夕陽を期待しながら、山頂へ。 この季節でここまで一日中、快晴が続く日があるのかと思うほど夕方になってもまったく雲が出ず、陽が落ちていきました。 気付けば穂高の上空に美しい月があらわれていました。陽が沈み、主役の座が月へと移り変わる時間。まだ太陽の光が強く残る空に浮かび上がった月が、自ら光を放たなくてもその存在感はとても大きなものでした。

今度こそ、最後の夜。ある程度荷物を整え早めに就寝します。 一日で下りることはほぼ不可能なので翌日はまた涸沢のテントで眠ろうと思いましたが、水を確保できないことが気になります。 涸沢ヒュッテの方たちは5日にはもう下りてしまうそうですが、涸沢小屋の方たちはまだ小屋閉め作業をされているとのこと。 そこで涸沢小屋に電話をして何とかお水だけいただけないか伺ってみたところ、「下山したら声を掛けてくださいね」とのことでした。助かります! でももしゆとりがあれば、横尾または徳沢まで行こうかな..とも思います。明日はさすがにお天気は午後から崩れるようです。

● 2011/11/05 ●

最終日の朝、山頂に向かうと、お天気が下り坂に向かうため適度に雲があらわれていました。 今日こそは変化のある空を見ることができそうです。 美しい常念岳のシルエット。そして浅間山。 その向こうの空が徐々に明るくなってきました。
街明かり、そして雲海。空が少しずつ明るくなってきました。現実のものとは思えないこの美しい光景とも今日でお別れです。 空が明るくなるごとに刻々と変化する前穂の色。ある時、深みのある紫色に包まれました。北尾根の美しい姿を正面から眺めることのできるこの場所で、たとえようのない感動に包まれます。

この三日間、定点撮影のように同じ場所、同じ構図で奥穂と前穂を撮り続けました。 上空の雲の効果で、今日もまたとても素晴らしい色に染まってきました。今この時、この瞬間にしか見ることのできない色。刻々と変化するあまりの幻想的な色に感動の連続でした。 そして八ヶ岳から太陽が昇り空が暖かな色に染まっていきました。美しい雲が広がったことで、最終日に最高の夜明けとなりました。

真っ赤に染まった秋色の槍ヶ岳、そしてキレット。険しい地形だからこそ、明暗が引き立ちます。やわらかな雰囲気の雲が地形とは対照的で、とても綺麗。 前穂と奥穂の上空に、ちょうどこの山々の頂の稜線をなぞるような不思議なかたちの雲があらわれました。 そして奥穂と北穂南峰の岩壁が、神々しく輝きました。 背景にお天気が下り坂に向かうことをあらわす暗い雲があらわれてきたことで、神々しい色がより引き立つように感じます。

小屋の営業最終日とは思えないほど美味しい朝食をいただき、荷物をまとめ小屋の外に出たのは朝の8時。 涸沢もしくは横尾までのつもりですが、下山は注意しなければならないことと、お天気が下り坂に向かっていることが分かっているので早めに出発することにします。 小屋のテラスから涸沢を見下ろして、今日も我が家のテントの無事を発見。ただ自分ひとりだけだと思っていたのですが、他にもテントが4、5張あることに少し驚きました。

朝8時半に、常連の彼女と出発です。当然カメラはザックの中へ。 この数日で雪がずいぶん解けたこと、下山日は気温も高くあたたかな朝になり雪が凍っていなかったこと、そして何人もの人たちが上り下りしたことでトレースもしっかりと付き、迷うことはまったくありませんでした。 ただ気をつけなければならないのは、岩と雪のミックスだということ。岩と雪のミックスは苦手なので、雪がずいぶん少なくなっても念のためアイゼンを付けたまま歩きましたが それでも例の核心部より上部でアイゼンを外したほどでした。 やはり2人の下山はお互いに心強く、核心部も慎重に下れば大丈夫でした。 ただ凍った雪が付いていたら、かなり不安な場所になりそうです。 そして驚くことに、まだ登ってくる人たちがいました。 もちろん小屋はもう終了なので皆さん涸沢を拠点に日帰りです。

ゆっくりと下山してきたつもりなのに、ほとんど休憩をしなかったためなんと涸沢に着いたのは午前11時前。北穂から2時間と少しで下りてきたことになります。 彼女にお礼を言ってお別れし、テントに戻ってきてホッと一息。もう足が疲労でかなり疲れ切っていましたが、ある程度の速さで荷物をまとめて頑張って下りれば今日中に上高地まで戻れそう。
涸沢を12時に出発。横尾本谷で大きなザックを担いだ男性2人に出会ってお話を聞くと、涸沢でテン泊するとのこと。まだ登って行く人がいることに驚きました。 そして何とか目標の横尾2時に間に合いました。霞沢岳の時に徳本峠小屋でお世話になった横尾山荘のスタッフの方にご挨拶をして、横尾を出発したのはもう2時半近く。 空がかなり怪しげになってきましたが、まだ降られません。でも徳沢を過ぎる頃、とうとう雨が降り出し最後は足を引きずるようにして上高地に着いたのは夕方5時。何とか無事間に合いました..。 今回も北穂高岳の新たな魅力を発見でき、そして運良く小屋締めの厳しい時期に登頂でき、思いがけず小屋にものんびりと宿泊でき、とても充実した色々な意味で贅沢な旅になり感謝の気持ちです。

● 写真(57) ●
  • 河童橋に着くと、穂高の上部に少しだけ、でもしっかりと雪が冠っているように感じました。朝一番の光が当たりとても綺麗でした。
  • 河童橋に着くと、穂高の上部に少しだけ、でもしっかりと雪が冠っているように感じました。朝一番の光が当たりとても綺麗でした。
  • 横尾に着くと、前穂の冠雪が気になります。
  • 横尾に着くと、前穂の冠雪が気になります。
  • そして横尾から少し進むと横尾谷のはるか遠くに、これから目指す北穂高岳。
  • そして横尾から少し進むと横尾谷のはるか遠くに、これから目指す北穂高岳。
  • 気分が高揚するとともに、果たしてこの時期にあれほどのお山に登ることができるのか不安な気持ちも入り混じります。
  • 気分が高揚するとともに、果たしてこの時期にあれほどのお山に登ることができるのか不安な気持ちも入り混じります。
  • 涸沢に近付くにつれ、すっかり葉を落としたダケカンバたち。そしてまだ真っ赤な実を付けたナナカマド。
  • 涸沢に近付くにつれ、すっかり葉を落としたダケカンバたち。そしてまだ真っ赤な実を付けたナナカマド。
  • 午後2時半。稜線に陽が沈みました。まだこんな時間なのに、この時期の涸沢は既に薄暗くなってしまいます。
  • 午後2時半。稜線に陽が沈みました。まだこんな時間なのに、この時期の涸沢は既に薄暗くなってしまいます。
  • テントを張ってのんびり一段落。テントの入り口を開けると稜線を眺められる位置に張りました。
  • テントを張ってのんびり一段落。テントの入り口を開けると稜線を眺められる位置に張りました。
  • 夜、テントから顔を出すと、穂高の稜線のすぐ上に月が輝いていました。シュラフに潜り込みながら星空撮影。
  • 夜、テントから顔を出すと、穂高の稜線のすぐ上に月が輝いていました。シュラフに潜り込みながら星空撮影。
  • 朝は美しいモルゲンロートを見ることができました。
  • 朝は美しいモルゲンロートを見ることができました。
  • 雪が冠ったことで更に色が映えて美しさが際立ちます。
  • 雪が冠ったことで更に色が映えて美しさが際立ちます。
  • 凍った雪が緩んで来る時間帯に登ろうと思っていたので、その前にしばらくお散歩。涸沢の池です。
  • 凍った雪が緩んで来る時間帯に登ろうと思っていたので、その前にしばらくお散歩。涸沢の池です。
  • 涸沢の池といっても大小いくつかの池があり、一番大きな池には北穂高岳が映っていました。
  • 涸沢の池といっても大小いくつかの池があり、一番大きな池には北穂高岳が映っていました。
  • 表面はすべて氷に覆われていました。でも池の中はまだ凍っていません。
  • 表面はすべて氷に覆われていました。でも池の中はまだ凍っていません。
  • 朝の9時過ぎ。気温が上がって雪が緩んで来ているのを祈りながら北穂高岳へ出発です。
  • 朝の9時過ぎ。気温が上がって雪が緩んで来ているのを祈りながら北穂高岳へ出発です。
  • テン場から30分ほど登っただけなのに眺めはがらりと変わり、前穂高の北尾根が美しくなってきます。
  • テン場から30分ほど登っただけなのに眺めはがらりと変わり、前穂高の北尾根が美しくなってきます。
  • テントとシュラフとマット以外はほぼ全て持ったので22kgほど。ストックはかなり迷いましたが、持ってきて良かった。
  • テントとシュラフとマット以外はほぼ全て持ったので22kgほど。ストックはかなり迷いましたが、持ってきて良かった。
  • 登り始めて1時間が経ち、前穂高岳が正面に堂々とした姿で聳え立ちます。そして眼下に小さく見える涸沢。
  • 登り始めて1時間が経ち、前穂高岳が正面に堂々とした姿で聳え立ちます。そして眼下に小さく見える涸沢。
  • 前方の急傾斜の大きな岩。写真では右側のガレ場から簡単に登れそうに感じますが、マーキング通りでなければ登ることはできません。
  • 前方の急傾斜の大きな岩。写真では右側のガレ場から簡単に登れそうに感じますが、マーキング通りでなければ登ることはできません。
  • ここで同じく単独の女性に出会いましたが、先に行っていただくことに。
  • ここで同じく単独の女性に出会いましたが、先に行っていただくことに。
  • いよいよ核心部。相変わらず写真ではなかなか高度感をあらわすことができませんでしたが、かなり急な岩壁です。
  • いよいよ核心部。相変わらず写真ではなかなか高度感をあらわすことができませんでしたが、かなり急な岩壁です。
  • 最後の長いハシゴを登り切ったところでホッとしながら写真を一枚。
  • 最後の長いハシゴを登り切ったところでホッとしながら写真を一枚。
  • 南稜のテン場に着いたのは、登り始めて4時間後の午後1時過ぎ。素晴らしい展望です!
  • 南稜のテン場に着いたのは、登り始めて4時間後の午後1時過ぎ。素晴らしい展望です!
  • 前穂と奥穂が同じ目線になっていることに気付き、大感激!
  • 前穂と奥穂が同じ目線になっていることに気付き、大感激!
  • そしてしばらく先に山頂が見えます!あともう少し、確か最後のトラバースだけ気を付ければもう大丈夫そう。
  • そしてしばらく先に山頂が見えます!あともう少し、確か最後のトラバースだけ気を付ければもう大丈夫そう。
  • 最後のトラバースも雪が凍っていなかったので、全く危険な箇所はありませんでした。常念岳も隠れつつあります。
  • 最後のトラバースも雪が凍っていなかったので、全く危険な箇所はありませんでした。常念岳も隠れつつあります。
  • 午後1時半過ぎ、北穂高岳山頂に無事到着しました!北穂高岳山頂の標識が見当たらず、冬の間は外されるのでしょう。
  • 午後1時半過ぎ、北穂高岳山頂に無事到着しました!北穂高岳山頂の標識が見当たらず、冬の間は外されるのでしょう。
  • 来た道を振り返ります。テン場もそろそろガスに覆われそうです。
  • 来た道を振り返ります。テン場もそろそろガスに覆われそうです。
  • 日の入り1時間前の午後4時。あれほど深く覆っていたガスに動きを感じ慌てて外に出るとあらわれた槍ヶ岳の穂先。
  • 日の入り1時間前の午後4時。あれほど深く覆っていたガスに動きを感じ慌てて外に出るとあらわれた槍ヶ岳の穂先。
  • そして振り返ると、前穂がすっかり姿をあらわしていました!
  • そして振り返ると、前穂がすっかり姿をあらわしていました!
  • 小屋に戻り急いでアイゼンを付け、山頂へ。キレット上を流れる雲がとても綺麗。
  • 小屋に戻り急いでアイゼンを付け、山頂へ。キレット上を流れる雲がとても綺麗。
  • 夕陽の時間を待ちながら、前穂と奥穂を撮ることのできるベストポジションを探します。他の方々に迷惑にならない場所を発見。
  • 夕陽の時間を待ちながら、前穂と奥穂を撮ることのできるベストポジションを探します。他の方々に迷惑にならない場所を発見。
  • 薄暗い朝の撮影の時間に戸惑わないために三脚を立てる場所を決めます。ところが夕陽を見ることはできませんでした。
  • 薄暗い朝の撮影の時間に戸惑わないために三脚を立てる場所を決めます。ところが夕陽を見ることはできませんでした。
  • 丸一日、展望がまったくきかないまま終えた後の翌朝、ようやく晴れました。山々が素晴らしい色に染まります。
  • 丸一日、展望がまったくきかないまま終えた後の翌朝、ようやく晴れました。山々が素晴らしい色に染まります。
  • 静かに穂高が目覚めようとしています。目前の風景が現実のものとは思えず、あまりの美しさに言葉が見つかりません。
  • 静かに穂高が目覚めようとしています。目前の風景が現実のものとは思えず、あまりの美しさに言葉が見つかりません。
  • 常念岳の美しいシルエットと浅間山の噴煙。寒々とした色の中に暖色系の暖かな色が見る見る間に広がってきます。
  • 常念岳の美しいシルエットと浅間山の噴煙。寒々とした色の中に暖色系の暖かな色が見る見る間に広がってきます。
  • 再び奥穂と前穂。定点観察です。刻々と変化する美しい色。
  • 再び奥穂と前穂。定点観察です。刻々と変化する美しい色。
  • 八ヶ岳から昇る太陽。全く何も見えなかった昨日と比べると贅沢な話ですが、雲がないことで変化がなく残念な気持ち。
  • 八ヶ岳から昇る太陽。全く何も見えなかった昨日と比べると贅沢な話ですが、雲がないことで変化がなく残念な気持ち。
  • 朝を迎える槍ヶ岳と黒部源流の山々。
  • 朝を迎える槍ヶ岳と黒部源流の山々。
  • そして赤く染まる奥穂と前穂。うっすらと雪を冠ったことで色が変化していく姿は何度撮っても飽きることがあるはずもなく..
  • そして赤く染まる奥穂と前穂。うっすらと雪を冠ったことで色が変化していく姿は何度撮っても飽きることがあるはずもなく..
  • もう少し陽が昇ったところで、ジャンダルムや北穂南峰も入れてみます。
  • もう少し陽が昇ったところで、ジャンダルムや北穂南峰も入れてみます。
  • 一日中快晴が続き、夕方になってもまったく雲が出ず、陽が落ちて行こうとしていました。
  • 一日中快晴が続き、夕方になってもまったく雲が出ず、陽が落ちて行こうとしていました。
  • 秋に北アルプスから眺める夕陽は白山に落ちていくこともあって、この時期に眺める夕陽はまた格別な思いがあります。
  • 秋に北アルプスから眺める夕陽は白山に落ちていくこともあって、この時期に眺める夕陽はまた格別な思いがあります。
  • 気付けば穂高の上空に美しい月があらわれていました。陽が沈み、主役の座が月へと移り変わる時間。
  • 気付けば穂高の上空に美しい月があらわれていました。陽が沈み、主役の座が月へと移り変わる時間。
  • 最終日の朝、山頂に向かうと、お天気が下り坂に向かうため雲があらわれていました。今日こそは変化のある空を見ることができそうです。
  • 最終日の朝、山頂に向かうと、お天気が下り坂に向かうため雲があらわれていました。今日こそは変化のある空を見ることができそうです。
  • 空が明るくなるごとに刻々と変化する前穂高岳の色。ある時、深みのある紫色に包まれました。
  • 空が明るくなるごとに刻々と変化する前穂高岳の色。ある時、深みのある紫色に包まれました。
  • 美しい常念岳の頂き。そして浅間山。
  • 美しい常念岳の頂き。そして浅間山。
  • この三日間、定点撮影のように同じ場所、同じ構図で奥穂と前穂を撮り続けました。上空の雲の効果で今日もまた、とても素晴らしい色に染まります。
  • この三日間、定点撮影のように同じ場所、同じ構図で奥穂と前穂を撮り続けました。上空の雲の効果で今日もまた、とても素晴らしい色に染まります。
  • 八ヶ岳から太陽が昇り空が暖かな色に染まっていきました。美しい雲が広がったことで、最終日に最高の夜明けとなりました。
  • 八ヶ岳から太陽が昇り空が暖かな色に染まっていきました。美しい雲が広がったことで、最終日に最高の夜明けとなりました。
  • 朝の光を受けて真っ赤に染まった秋色の槍ヶ岳。そしてキレットにはほど良く美しい滝雲がかかりました。
  • 朝の光を受けて真っ赤に染まった秋色の槍ヶ岳。そしてキレットにはほど良く美しい滝雲がかかりました。
  • 険しい地形だからこそ、明暗が引き立ちます。やわらかな雰囲気の雲が地形とは対照的で、とても綺麗です。
  • 険しい地形だからこそ、明暗が引き立ちます。やわらかな雰囲気の雲が地形とは対照的で、とても綺麗です。
  • 朝の光に包まれる前穂。今この時、この瞬間にしか見ることのできない色。
  • 朝の光に包まれる前穂。今この時、この瞬間にしか見ることのできない素晴らしい色でした。
  • 前穂高岳と奥穂高岳の上空に、ちょうどこの山々の頂の稜線に沿うような不思議なかたちの雲があらわれました。
  • 前穂高岳と奥穂高岳の上空に、ちょうどこの山々の頂の稜線に沿うような不思議なかたちの雲があらわれました。
  • 奥穂と北穂南峰の岩壁が神々しく輝き、背後に暗い雲があらわれより一層、神々しさが際立ちました。
  • 奥穂と北穂南峰の岩壁が神々しく輝き、背後に暗い雲があらわれより一層、神々しさが際立ちました。
  • 北穂高小屋を建設された小山義治氏が、小屋を開設される際に一人で担ぎ上げられた長くて重い梁を発見。
  • 北穂高小屋を建設された小山義治氏が、小屋を開設される際に一人で担ぎ上げられた長くて重い梁を発見。
  • 長い間お世話になった、北穂高小屋とも今日でお別れです。
  • 長い間お世話になった、北穂高小屋とも今日でお別れです。
  • 朝はあれほど元気だった太陽の勢いが弱くなりましたが、やわらかな美しい光が降り注いでいました。
  • 朝はあれほど元気だった太陽の勢いが弱くなりましたが、やわらかな美しい光が降り注いでいました。
  • 涸沢に着いたのは午前11時前。かなり疲れ切っていましたが、何とか今日中に上高地へ向かえそう。
  • 涸沢に着いたのは午前11時前。かなり疲れ切っていましたが、何とか今日中に上高地へ向かえそう。